研究者が生活できない国で、科学を続ける理由
「運動で怪我を防ぐ!『使いやすい筋肉』の偏りをなくすための正しい体の使い方」
などをお読みいただいた方の中には、こんな疑問を抱かれたかもしれません。「では早く研究で証明して、体に何が本当に良いのか教えてほしい!」と。
個人的な話になりますが、私はアメリカに渡る前に国内で医学博士を取得し、大学病院や研究施設で研究者として活動していました。大学院生という立場もありましたが、研究そのものに対する報酬は「0円」でした。一方、アメリカでは研究者に給与が支給され、研究費用も教授や準教授が責任を持って準備するのが当たり前の環境でした。
また、アメリカでは優秀な研究者にはスポンサーが付き、生活が保障されるため、研究に集中して知的能力を思う存分発揮できる環境が整っています。帰国後、日本の大学から教授職の道を提案されたこともありましたが、一度アメリカの研究環境を経験してしまったため、日本で同じ研究をするにも1000倍以上の労力や精神的ストレスがかかることが容易に想像でき、決断には至りませんでした。
現在でも、かつての同僚たちは、朝9時から夕方5時まで医療従事者として働き、その後研究施設に移動して夜10時、11時まで研究に取り組む生活を続けています。これが現在の日本における医学研究者の現状です。私は2020年に、医師や医学研究者である前に一人の人間であることを優先しました。今では、大切な人を大切にする生活ができています。研究と生活の両立は日本国内では非常に難しいと感じています。何か打開策があれば良いのですが、私はこの業界から身を引きました。
日本人が論理的思考が苦手と言われる理由
海外にでると、「 論理的思考が苦手だから、英語が話せない」 といった声を多く聞きました。 英語は論理的な言語であると感じます。 今でも私は何かを学ぶときは、英語の教科書を読みます。その方が周りくどくなくわかりやすいのですが。
日本における論理的思考の難しさは、研究者の数が少ないことも一因だと感じます。多くの一般の方は、物事を論理的に考え、研究に取り組む研究者と出会う機会がないかもしれません。そもそも、多くの研究結果は有意な改善を示しますが、単一の研究だけで断定的な結論を出すことは難しいものです。そのため「何かをしたら必ず何かが得られる」といった断定的な表現は、特に健康関連商品の販売においては本来避けるべきです。しかし、情報が氾濫する情報化社会では、個人の判断能力がますます求められています。
現在の日本の環境では、医学研究が十分な支援を得られないため、専門知識の普及や論理的な思考の育成も遅れがちです。その結果、正しい知識や研究に基づいた思考法が一般の方に十分に伝わっていないことも多くあります。
医療従事者は医学研究者ではない
医療従事者が詐欺まがいの商法に巻き込まれるケースも少なくありません。実は、Thriveトレーニングの開発当初、こうした被害に遭う医療従事者を助けることを目的として、疲れ切っている医療従事者向けに開発されました。ここで注意すべきは、医療従事者であっても必ずしも医学研究者ではないということです。国家資格を取得すれば従事できる職業です。一方、医学研究者には大学院や研究施設での医学博士課程の修了と、卒業試験に合格して初めてその称号が与えられます。
卒業試験では、「原著論文」と呼ばれる論理的に物事を証明する論文を作成する能力が求められます。医学博士になるには、複数の研究結果を総合的に評価する力も必要とされるのです。
研究者が生活できない国:日本
「国立研究開発法人 理化学研究所」は、日本で最も歴史ある科学研究機関の1つで、基礎科学から応用研究まで幅広くカバーしています。略して「理研」と呼ばれます。その理研では、研究者の年収が300万円程度だと言われます。親しい友人2人もかつて理研に在籍、現在は二人三脚で米国ミシガン州立大学でがんに対する研究を続けています。彼らは理研で、空き時間にアルバイトをしなさいと先輩から言われたそうです。しかし、彼らは「アルバイトで肉体が疲れたら、創造的な発想や思考ができない」と反論し、逆に「年上の先輩に生意気なことを言うな」と叱られ、話が平行線をたどったため退職を決断しました。
スポーツ、アート、サイエンス&メンタル
こうした価値観は、スポーツ、アート、サイエンス、そしてメンタル面でのトレーニングなど、目先の利益に直結しない分野で特に大切です。たとえば、1000円出しても1000円の商品が得られるとは限らないものです。芸術品の価値が1000円かどうかも一概には決められませんし、サイエンスやメンタルのトレーニングも、いつ1000円分の自己肯定感が得られるかはわかりません。 1000円払ったら1000円分の脂肪落としてくれるトレーニングもありません。
これらは目に見えづらいものですが、こうした分野に価値を感じられるかどうかが、人生の幸福度のカギだと考えています。本サイトのトップページにある「ヘルスコレクティブ」は、健康(ヘルス)に価値を見出す方々の集まり(コレクティブ)です。私たちはこうした方々を「健康エリート」や「先進層」と呼ばせていただいています。和訳を試みると、「健康集団」や「健康共同体」のようなニュアンスです。
皆さん自身がまずご自身の健康を取り戻された後、将来的に周囲の人々に良い影響を与える存在になれることを信じています。そのような存在は社会にとって非常に価値あるものです。これが、当院が日本国内で提供し続けているメディカルトレーニングの意義であり、非常に難しい環境の中でも続けていく理由です。